技術広報ブログ

技術広報のためブログです。

技術広報と技術ブランディングの違い。そして、それを行う意味

こんにちは@techfavoです。最近、技術広報ということ役職を置く企業が増えていると思います。この職種を置く企業が増えている理由としては、個人的には主に下記が影響しているのかと考えています。

  • 人口減少によるエンジニア不足
  • 技術スタックのコモディティ化による他社との差別化の難易度があがった
  • 大手・メガベンチャーによるエンジニアの自然独占

一応、考えの根拠になりそうなところも紹介しておきます。日本におけるエンジニア不足は周知の事実だと思いますが、2030年には45万人の人材が不足するそうです。

 

- IT 人材需給に関する調査 -

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

 

また、最近はクラウドや情報発信のオープン化により、技術スタックが似ている企業が多くなっていると思います。

 

 codezine.jp

 

そうなると技術による差別化が難しくなり(実際はそんなこともないとは思いますが)、第三者から見るとどこの企業に行っても同じ、ということになってしまします。こういったコモディティ化が起こると、マーケティングの原則が当てはまり、自然独占の法則で大手に人が集まっていく図式になると思います。

また、エンジニアの過半数が1〜3回ほど転職をするそうですが、転職の主な理由が「給与」とのことなので、これからますます給与が高い大手への転職を目指す人が増えると思います。

結果として、一部の大手以外どの企業もエンジニアが不足するので、どの企業もエンジニア採用に力を入れるのに、専門的な技術のことを広報する役職が必要になってきたのだと思われます。

こういった背景を踏まえて、技術広報の役割としては下記が考えられます。

  1. 社内の技術力を広める & 発信の文化を作る
  2. 業界へ知識を還元する
  3. 社内のエンジニアにスポットライトを当ててエンゲージメントを高める(組織力の強化)
  4. エンジニア採用に貢献する

前述したIT業界の現状から一番の目的というか、技術広報の成果として求められている根底は採用が考えられると思います。

とはいえ実際に業務を行ってみると「技術力を広報をするだけで採用という問題を解決できるのか?」という考えに至ります。そこで、年末から年始にかけて採用やブランディングの本を読み漁っており、その中で自分なりに技術ブランディングが良さそうという解釈が出てきたのでブログにしています。

技術広報と技術ブランディングの業務の定義

まず初めに両職種の業務の定義を考えてみます。あくまで個人的な定義なのでお気をつけください。

広報は「PRのピラミッド」にあるようにパブリシティ(宣伝・報道)→ パーセプションチェンジ(認識の変化)→ ビヘイビアチェンジ(行動変化)を行うのが主な業務だと思われます。

ddnavi.com

広報を技術広報に特化するとパブリシティはブログ、勉強会、カンファレンスなどで自社の技術力をアピールすることだと思います。それで、その発信した情報に触れた人が「この企業はRustを使っているんだ」とか「この企業は技術力が高い」という認識が起こり、転職なり勉強会への参加なり何かしらの行動へと変化させるのが目標になると思います。こちらは社内の情報を拾ったり、社員にお願いしたりすることで少人数のチームでも動きやすい職種になると思います。

ブランディングというのは、その企業や商品に愛着(ブランドロイヤルティ)を持ってもらえるようブランドネームの浸透、わかりやすいコンセプトの策定、差別化のためのポジショニングなどを行なって行くことかと思います。

技術広報同様に技術ブランディングとして考えると、界隈で所属企業の名前を浸透させたり、エンジニア文化を明文化したり、ブログやイベントで伝えたいメッセージを書いたりして「この企業の情報はすごい」とか「この企業なら転職しても間違いない」とか、プラスの要員も思っていただけるようにすることかと思います。ブランディングは外部からのイメージに起因するものなので、外部の人にどう伝わっているのか、どう思われているのかを考えるのが重要な業務になると思います。こちらは経営者の考えを理解し、さまざまメッセージを社員や外部の方一人ひとりに浸透してもらう必要があるので、人手が必要になるかもしれません。

まとめると、技術広報はこちらから情報を投げて行動を変えてもらう、技術ブランディングは人々にどう思われているかをプラスの方向にしていくことだと思います。

技術広報と技術ブランディングの役割の違い

この2つの業務ですが、最終的なゴールは「転職時に自社を想起してもらえること」だと思います。転職を検討した際に最初に検討してもらえることをここでは第一想起と呼ぶことにしますが、この最初に想起してもらえることがエンジニア転職市場ではとてつもなく重要だと思っています。なぜなら、約45%のエンジニアが1社目の応募で転職を終えてしまうからです。

doda.jp

IT業界だと1社目に応募して転職を終えてしまう割合が異常に高いのですが、これはIT業界ではリファラル採用が多いというのが少なからず影響しているかと思います。

hr-tech-lab.lapras.com

こういった事情から転職者から第一想起として認識されないと、採用に結びつけるのが難しいのがエンジニア採用です。

ここで最初の疑問に戻りたいと思いますが、技術力の高さを広報としてアピールするだけで、この第一想起になることは可能なのでしょうか? 技術力に圧倒的な優位性がある企業であれば可能だと思いますが、技術力だけで第一想起になれるのはせいぜい2〜3社だと思います。なので、多くの企業にとっては第一想起になるには技術ブランディングをしてロイヤリティを高めるのが重要なのではないでしょうか?

このように書くと、技術広報は無駄のように感じてしまいますが、もちろんそうではなく、技術広報と技術ブランディングでは担当する領域が異なるのだと思います。当然ながらブランドのロイヤリティというのは、よくしっているものに対して感じるものです。一般的に未知の領域のものをブランディングをしていくのは難しいので、人々の認識を認知の領域へ持っていくのは技術広報の役割だと思います。

技術広報と技術ブランディングの役割の違い

どうやって技術をブランディングするのか

(長くなるので技術広報に関しての説明を省きます)

技術ブランディングをするとして、一般的なブランディング手法同様にポジションによる差別化をするのが常套手段だと思いますが、今はどの企業も技術力が格段に上がっているので、ブログやイベントをただするだけだと差別化するのは難しいと思います。

では、どうやってブランディングをすればよいのか? という点ですが、『組織力強化プロセスとしての 企業ブランディングとその効果』という論文にブランディング活動の共通ステップが紹介されているので引用します。

 

  1. ブランド理念の明確化
  2. ターゲット顧客と提供価値の設定
  3. 競合比較
  4. ブランド・アイデンティティの策定
  5. ブランディングの実践ガイドライン策定
  6. コミュニケーション発信(社内向け・社外向け)

 

組織力強化プロセスとしての 企業ブランディングとその効果

https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/36/1/36_2016.026/_pdf/-char/ja

 

上記のステップを一つずつ検討していきたいと思います。

 

1. ブランド理念の明確化

ブランド理念の明確化は、理念を明確化できるように自社分析をすることです。CTO、テックリード、現場のエンジニアにインタビューすることで立場の違う意見が聞けるので良いと思います。個人的にはそのインタビューは記事にして公開すると、技術広報としての役割も担えるので一石二鳥ですね。

2. ターゲット顧客と提供価値の設定

ターゲット顧客と提供価値の設定は、自分たちが何を提供できるのかを考えるステップです。顧客(求職者)が期待していること、自社が貢献できることを踏まえて、価値の設定をします。ここは自社の開発体制やカルチャーのお話になるのかと思います。

3. 競合比較

競合比較では、競合と比較することで差別化を図るステップになります。ここでいわゆるポジショニング戦略を立てるわけです。競合はサービスの競合とは他に、似たようなエンジニア組織の企業を競合比較で考える手もあります。

4.ブランド・アイデンティティの策定

ブランド・アイデンティティの策定では、今までのプロセスから適したフレーズやポジショニングを選ぶステップです。例をあげるとゆめみさんが非常に素晴らしいブランディングをされていると思うのですが『ゆめみは成長環境しか提供できません』と明言しており、エンジニアが求めている「自身の成長可能性」というニーズ、ポジショニングを抑えているのかなと思います(違ったらごめんなさい)。

note.com

prtimes.jp

5. ブランディングの実践ガイドライン策定

ブランディングの実践ガイドライン策定については、どうやって実践していくかについてのガイドラインを作る事ですね。こちらはIT業界に関わらずさまざまな企業のガイドラインを見てみるといいと思います。

6.コミュニケーション発信(社内向け・社外向け)

コミュニケーション発信(社内向け・社外向け)については、技術広報としての専門分野だと思いますので、上記のブランディング戦略を今までの広報にプラスして組み込んでいくのが良さそうです。

終わりに

いかがだったでしょうか?

対社外の話しばかりしてきましたが、ブランディングは会社の理念を社内に浸透させるため、組織力を強化する役割もあるそうです。一般的なブランディング手法が技術の分野で同じように活かせるかは不明瞭ですが、試してみる価値はありそうです。